青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
誘導されるがまま俺達は校舎の外へ。
結局、生徒会室前の窓辺付近に移動することになった俺達は、須垣先輩と向かい合うようなカタチでその場に佇む。
「さてと、御用は何かな?」
細く笑う須垣先輩の白々しさにヨウは舌を鳴らして食い掛かろうとした。
けど日賀野がそれを制し、
「兄貴のことを聞きてぇ」
率直に物申す。
兄貴、つまり五十嵐竜也の所在について聞かせろ。拒否権はない。
もしも拒否したら……目を細める日賀野の威嚇にさえ動ずるこのとない須垣先輩はクスクスと笑うだけ。
「兄貴ねぇ。そんな奴いない」
綺麗に綻ぶ須垣先輩はうそぶいて見せた。誰が見ても嘘だと言えるその表情。
「ざけるな」
ヨウの悪態に、
「ふざけていないさ。僕には兄なんていないし、そんな奴がいたとしても認めない」
表情をそのままに先輩は答える。
「ま、戸籍上兄はいるけれど? まあ、僕には一切カンケーのない話だ。
君達が72ゲームをしていたとしても、僕にはまったくメリットのない話。仮に僕が何かを知っていたとしても、それを君達に話して僕に何の得があるんだい?」
「あ゛ーっ! くそっ、やっぱテメェっ、知ってやがるじゃねえか! まどろっこしい言い方しやがって!」
地団太を踏むヨウを余所に、
「大体君達の自業自得だろ?」
須垣先輩はちょっと声のトーンを落とした。
「君達が中学時代に横暴な義兄さんを伸したりするものだから、こーんな面倒極まりない事件が勃発した。
義兄さんはすこぶるプライドの高い男だからね。
当時は荒れてたもんだよ。
義弟の僕は散々八つ当たりされるわ。パシられるわ。仕事を押し付けられるわ。見張りを頼まれるわ。
何が哀しくて不良の君達を見張らないといけないのか。
あーやだやだ。不良はこれだから、ジコチューで自分のしたい放題してくれる。
僕は君達みたいな傍若無人に振舞う不良が大嫌いさ。
学校の秩序は平然と乱してくれるし?
生徒会の仕事は増やしてくれるし?
家族としてもメーワクばっか掛けてくるし?
不良の義兄弟を、義兄を、家族を持つ僕の気持ちなんて分からないだろうけどね。
ご近所からも迷惑な眼を投げられるし、時に文句も喰らうし、苦情も受けるし。
悪循環なことに、当人達は自分で好きな事をしているだけなんだってメーワク掛けている自覚はなし。
自己責任だと思っているかもしれないけど、不良の犯す愚行は時に家族さえ巻き込む。
はぁ、巻き込まれた僕ってなんて哀れなんだろうね。扱き使われるし、こっちの言い分なんてまるで無視だ。
不良ってすこぶる仲間意識は高いみたいだけど……家族はどうなんだって話だ。現に今もこうして不良に絡まれるし? 地元で有名過ぎる不良お二人さまに、
ね。ホンットまったくもっていい迷惑だ。僕は何もカンケーないのに。
と、君達に苦情を言ってもしょーがないんだろうけどね。
悲観的になったって所詮は笑い話だろうから。
義兄さんのことだろ?
今、あの人が何をしているかのはある程度分かるよ。
ツイッターで調べれば分かる。
あの人はツイッター中毒者だから。
いがらし(@×g●×g●)で調べればいいさ。
所在? あー、今は知人の家で寝ているんじゃない? 義兄さんは夜型人間だからね。
夜は君たちの動きを隈なくチェックしてるみたい。知人の家までは僕も知らないから何とも言えないけど」
「ほぉー、随分ご丁寧に情報提供をしてくださるが……それを安易に信じるほど俺は馬鹿じゃねえ」