青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
ちなみに利二とアズミは、日賀野側の協定チームのたむろ場で待機するそうだ。
ハジメはこのまま帰宅をするんだけど、利二やアズミと連絡を取り合って同じように連絡係りをしてもらう予定だ。
ハジメはタクシーで駅まで、二人は協定チームのバイクに乗って移動。各々仲間内の連絡係りの三人を軽く見送る。
「では荒川さん。自分はお先に失礼します。ご無理はしないで下さい。皆さんも、どうぞご無事で」
丁寧に頭を下げる利二はたむろ場で待機しつつ、自分のできることを精一杯させてもらうとリーダーやチームメートに告げた。
「テメェもな」
何かあれば連絡しろってヨウは利二の肩を叩く。
「テメェは俺等のチームなんだからな。遠慮なく電話して来いよ」
面を食らったような顔をしていた利二だったけれど、すぐに柔和に綻んでポツリと零す。
それは俺達には聞こえない、小さなちいさな声。
でもヨウにだけはしっかり届いていたみたいで、「サンキュ」満足気に頬を崩している。
え? 何て言ったの? 俺、スッゲェ気になるんだけど。
「利二ワンモア」
リピートしてくれと頼むと、
「さあな」
利二は意地の悪い笑みを浮かべて肩を竦めた。
何だよお前、俺とお前の仲じゃないか。隠し事とかお互いナッシングにしようぜ!
だけど利二はちっとも教えてくれない。
「ちゃんと彼女、取り戻して来い。だがカッコつけるのは大概でやめておけ。また病院送りになるからな」
クスクスと笑い、俺の脇を小突いて「無理するなよ」心配の言葉を掛けてくれるだけだ。
ちぇ、ケチ。
後でヨウに聞いてやるんだからな。利二。
ヨウは利二と会話を交わした後、目と鼻の先にある大通りに松葉杖をついて向かう予定の怪我人に視線を投げる。
すっぽりとキャップ帽をかぶっている不良はヨウの視線を受け止めると、
「また離脱しちゃって悪いね。今も昔も足手纏いばっかりでごめん」
相も変わらず卑屈を零してきた。自分を卑下することがほんと好きだな、ハジメ。
いやハジメは捻くれているから卑屈で自分の気持ちを隠しているんだろう。
自分を卑下するわりには顔は穏やかだ。
捻くれた台詞はハジメのコミュニケーションだと思ってもいいかも。
付き合いの浅い俺が分かるんだから、中学から絡んでいたヨウは尚更分かっていたみたい。
頭を小突いて「さっさと戻って来いよ」ぶっきら棒に鼻を鳴らした。
「いつまでも戻って来なかったら俺とタイマンな。容赦してやんねぇ」
「わぁお、それは困るな。君の実力が痛いほど知っているんだ。リーダーとタイマンなんて死んでもごめんだって。
大丈夫ヨウ、僕は卑屈を零すけど今しっかりと誇れるから。
だってさ、いつまでも帰りを待ってくれるチームがいてくれるんだ。
嘆くなんてカッコ悪いじゃないか。
そうだろ? 必ず帰るよ。僕は君の立ち上げたチームの一員だ。今なら堂々と口に出来る」
目尻を下げるハジメに、仏頂面作っていたヨウも一変して目尻を下げた。
軽く右の手を挙げ待っていると意思表明。
了解だとばかりにハジメはあいている左手でハイタッチ、しっかりと約束を交わしていた。絶対にチームに戻って来るという約束を、しっかりと。