青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―








時刻はちょっきし6時。

時間になった俺達は急いで移動を開始する。



目指すは隣町“港倉庫街”。

ヨウ達が中学時代、五十嵐を狡い手で伸したという因縁の場所だ。

当然徒歩で行くには時間が掛かるから、バイクという画期的な乗り物を使って向かう。


俺はチャリで隣町に向かう気満々だったんだけど、「阿呆か」日賀野に無駄な体力を浪費してどうするんだと注意をされた。


「バイクは協定チームが貸してくれる。貴様は俺の後ろに乗ればいい」


いやそりゃそうだけど、チャリはどーするんだよチャリは。

俺にとってチャリは喧嘩の必須アイテムなんだぞ。

新品の愛チャリは二重ロックをして神社裏にでも留めておけばいいけど、問題は現地にチャリがないということだ。


チャリが無いのは俺にとって致命的だし作戦の流れではチャリは数台必要。どうやって調達するんだよ。


泉のように湧く疑問に対し、日賀野は当てがあるとニヤリ。

とにもかくにも愛チャリで現地に向かう必要は無いみたいだ。

あんましっくりこないけど相手が自信満々に言うんだし、信じてみよう。


俺は愛チャリを神社裏に置いて日賀野の運転するバイクに乗せてもらった。

殆どバイクの後ろに乗る機会はないんだけど、運転に集中しなくてもいいし、何より楽ちんだ。乗るだけでいいもん。


悠々とした気持ちでバイクの後ろに乗せてもらうこと15分、あっという間に隣町に到着する。

“港倉庫街”付近にはわりと大きな町が存在していて、そこでまずチャリを調達しないといけない。


さてとチャリじゃどーやって調達するんだ。


あ、分かったぞ!

日賀野のことだからきっと先に協定チームにチャリを持って来させているんだ!


これだったら日賀野がチャリを置いてけってのも納得できるな。


やっぱさすが日賀野大和だな。

先の先まで読んで行動を「おい、プレインボーイ来い。今からチャリパクしに行くぞ」………What?


何を言われたかは分からず目を点にする俺に対し、日賀野は当然のように周囲を見た。



「そこら辺に確かチャリ置き場がある。警備員もいない時間帯だし、今の時間帯ならチャリが大量にある筈だ。チャリを二、三台パクるぞ」



大層なことを言ってくれる日賀野は制服の襟首を掴んでこっちだと引き摺った。

ちょ、ちょちょちょっ、この人、ナニ外道なことを言ってくれちゃっているの! パクる……それってもすかすて窃盗するんじゃっ?!


いやまさかそんな、俺、日賀野大和兄貴のこと信じているから?


怖くても信じているから?

そんなそんな、まさか窃盗なんて。


「いいか。なるべく良品なチャリを選べよ。ケン、ペンチの準備をしとけ。それとアキラと貫名に見張りをしろって言っとけ」

「はい。了解です」


ナニ手馴れた口調で了解とか言っちゃってくれてるの、健太さん。


引き攣り笑いを浮かべる俺はスーパー裏のチャリ置き場に佇んでいた。


ごみごみと密集しているチャリを数台パクろうなんて考える事がえらく狡いぞ日賀野大和。

あ、狡賢さは天下一だったなお前。


だ、だけどやるっきゃないぞ!

犯罪だけどやるっきゃないんだからな! 良い子の皆はマネなんてしちゃ駄目だぞ!



ま……まあさ。



ぱ、パクるんじゃなくて借りるだけだと思えば心も休まるよな!

よく考えてみれば俺も路上に放置されていたチャリを失敬したことがあった!


か、借りるだけだ!

よしっ、チャリを選ぶぞ! あんまりモジモジしていたら日賀野に怒られちまうし!


ということで俺は素早くチャリに目を向けて、良品なチャリを三台選ばせて貰う。


良品というのはタイヤの空気が入っているか、簡単に二人乗りできるチャリか、ライトの点き具合良いかの三点だ。


俺的に運転に関わるハンドルも考慮したかったんだけれど、そこまで見る時間は無かった。


目分でこれでいいかな? と思うチャリを三台ほどパク……じゃない、三台ほど借りるために候補を探す。


俺はチャリ慣れしているから、ある程度のチャリだったらどんなものでも乗りこなせる自信がある。


ただし今回は他の奴もチャリに乗るからな。

なるべくは使い勝手の良いチャリを選ばないと。


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