青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―



だけど、俺は思うんだ。


「ヤマト、下手こいたらブッコロしゅんだぜ?」

「チッ、るっせぇ。いい加減、ネチネチしつけぇんだよ荒川。貴様こそ馬鹿起こしてヘマするんじゃねえぞ」


余計なお世話だとヨウは鼻を鳴らし、日賀野は相手に背を向けている。

まあリーダー達個々人の私情はともかくさ、チームはお互いを認めあっているんじゃないかな。


俺には個人的な因縁はチームに無いけれど、日賀野チームの面子は普通に凄いと思っているし手を組めばすげぇ奴等だって再確認した。


きっと向こうだって思っているに違いない。

俺がすげぇって思うように、向こうだって。


それが“認める”一歩なんじゃないかと思うよ。

ま、俺は因縁に直接関わっていないから何とも言えないんだけどさ。


「行くぞ、テメェ等。ぜってぇに勝つぞ」


斬り込み隊の長はそう全員に言い放ち、


「負けになんざ縋るんじゃねえぞ。先日の借りは必ず返す」


本隊の長は低い声で唸った。




始まる。

土曜の決戦の借りを返す、そして人質を取り戻す最後の戦いが。手を組んだ二チームが一チームになって今、再戦を挑む。


ヨウ達の乗るバイクのエンジン音が夕月夜の空に舞い上がる。

俺はシズの運転するバイクの後ろに跨る舎兄に声を掛けた。


「ヨウ、すぐ俺達も参戦するからな。先陣切ってきてくれよ」

「ああ。余裕で先陣切ってきてやっから」


「待っているぜ」ヨウはイケた笑顔を俺に向けると、斬り込み隊に右の手を挙手して合図。


走り出すバイク達は風を切って一足先に“港倉庫街”に向かった。


「ねえ、ターコ。早くしてよねぇ」

「だぁあ俺は谷沢だ! カマ猫っ、振り落とすぞ!」


チャリ組のタコ沢とホシだけが出発に遅れていたけど、どうにかチャリを発進させて皆の後を追っていた。




本隊の俺達は待機しつつも連絡係りと連絡を取り合って、いつでも出発できる準備をしておくことにする。


この喧嘩は中学時代に五十嵐と関わりを持つ不良達だけの喧嘩じゃない。


先日負けたチーム全員の誇りを懸けた喧嘩だ。

惨めに負けても、大事な者を人質に取られても、狡い手で奇襲を掛けられても、俺達は屈しないし負けやしない。


「荒川達が先陣切るからって気を緩ませるな。今からでも気張れ」


本隊の指揮官が喝破するけど、言われるまでもない。



さあ、今一度プライドを懸けて挑もう。


これは俺達の喧嘩。

俺にとって今まで一番でかい喧嘩。




「ココロ、待ってろ。今すぐ助けに行くから。今すぐ迎えに行くから」





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