青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
過去の自分を叱咤しつつ、ヨウは首を捻って追っ手を確認。お出でましのようだ。
コンテナとコンテナの細い左右の道から、軍隊蟻のようにわんさか出てくる不良達を見て舌打ち。見るからに向こうの協定チーム。
ヨウは挙手をして仲間内に注意を呼び掛ける。
するとチャリ組のホシが片手を挙げて注意を促してきた。片手には故意的に曲げられた古く太い釘たち。
なるほど、さすがはヤマトチームだけあって狡い手を使うようだ。
事前に打ち合わせていたこともあり、了解だとヨウは頷くとバイク組に指笛で注意を指示。
その間、タコ沢は一旦集団から離れて細い道に身を隠す。
並列に佇むコンテナや倉庫を大きく回って前に現れるつもりだろう。
チャリとバイクでは速度が違う。
待ち伏せしなければ、向こうお得意の狡い戦法も使えない。待ち伏せまで時間が掛かる。
さてと、此方も少し追っ手の数を減らしておかなければ。
なるべくは五十嵐達の時まで体力を残しておきたいが、ヤラれてしまっては元も子もない。
ススムが挙手をして自分達に何かを指示してくる。
その指示、気を付けろという意味なのだが一体全体何が気を付けろなのか。
ホシが起こそうとしている行動以外にも気を付けなければいけないこととは……一体。
首を傾げるヨウやシズに対し、
「「了解!」」
玉城不良兄弟が敬礼をして後ろに乗っている勇気が振り返った。
「へへっ、オレとあっちゃんのお得意武器。とくと受けてみろ!」
「おう、やっちゃえ。ゆっちゃん!」
「「これは僕(オレ)達の怒りだ!」」
土曜の決戦以来、絶対復讐してやろうと誓っていた。
ニヤッとシニカルに笑う玉城勇気(紅白の白)はポケットから紐で連なる赤い筒状のものを取り出すと、百円ライターで導火線を焙り、そのままポイ。
目を点にするヨウとシズに対し、パンッ―! パンッ―! パンッ―!!
放ったそれは激しい音を鳴らして相手をかく乱、否、一抹の恐怖心を植えつけていた。
まるで悲鳴のように大きな音を鳴らすそれは花火、簡単に言えば爆竹である。
道には勿論、運転手の方にも投げる鬼畜行為に荒川チーム唖然である。
惑う追っ手はブレーキを掛けたり、爆竹を必要以上に避けたり、驚きのあまり別の方向へとハンドルを取られてしまったり。
白煙が上がる頃合、前に回ってきたチャリ組が自分達に脇に逸れるよう指示。
左右に分かれてバイクをかっ飛ばすヨウ達を確認した後、ホシが道の真ん中にまきびしならぬ釘びしを投げて相手のタイヤを狙う。
見事にタイヤに刺さったバイク達の運命は謂わずも、だろう。
追って来られなくなる追っ手達を見て安堵半分、そして半分は冷汗だったりする。
「……改めて思う。こいつ等はヤマトの仲間だよなぁ。
やることなすこと狡いのなんのって……爆竹とかどっから仕入れてきているんだよ。マージ怖ぇ奴等」
「……まったくだな」
「けど、あれもあいつ等のやり方なんだろうな。
昔だったら反感を抱いているけど、今なら何となく受け入れられる。仲間を守るためのやり口なら仕方ねぇってな。ま、死んでもマネなんざしねぇだろうけど」
「それも、まったくだ」
苦笑を漏らすシズに苦笑を返し、ヨウは合流した仲間達が全員無事な事を確認。
後尾を走るチャリ組の安否も見定めた後、改めて敵を把握する。