青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
今、協定チームと共に乗り込んだため些少ながらも向こうで混乱が起こっている筈。
須垣が義兄に連絡していなければ、自分達が手を結んだことも知らぬ筈だ。
無知は隙を突けるチャンス。
ヨウは急いで五十嵐達の姿を探すことに専念した。
敵を少しずつ減らしながら。
古びた倉庫たちをバイクで駆け抜け、キャツたちがたむろってそうな場所を目で探す。
しかし“港倉庫街”はだだっぴろい。見当がまるでつかないのが現状だ。
「そうだ!」
ヨウはブレザーのポケットに手を突っ込み、携帯を取り出すと手早くインターネットを起動。開くサイトはツイッター。
キャツはツイッター中毒だそうだから、何か情報を漏らしているかもしれない。
何かあった時のためにブックマークをしていたのだ。
我ながら閃いたもんだと自画自賛しつつ、ツイッターを開く。
どうやら少し見ない間に更新されているらしくツイート数が増えている。
「あー……最後の更新が」
>>@×g●×g● いがらし
外が騒がしいようだが、取り敢えず人質の移動は完了w
(15秒前)
「ケッ、なあにが『完了w』だ。ざけやがって。これじゃあ場所を把握するのは難しいな」
「ヨウ……向こうの協定チームの厚い層を狙ってみないか? 五十嵐のことだ……高みの見物をするために……偏った力を配分をしている可能性がある」
素敵に無敵・素晴らしいご意見だ。
「うっしゃ。それでいこう」
ヨウは頷き、携帯を閉じてポケットに放り込んだ。
まさしく特攻する自分達に相応しい行動を起こしてみせようではないか!
お得意分野だ、こういう無茶振り特攻。
荒川チームのお得意戦法とも言える。
ヨウは指笛を吹いて仲間内に移動の指示。
先頭を走る自分達について来いとジェスチャーで伝え、シズにハンドルを切らせた。
走る大型機械を方向転換し、向かう先は敵方の協定チームが集う層。
何処らへんに集っているのか見当もつかないため、予測して走るしかない。
ヨウは後尾を走るチャリ組に携帯で連絡を取る。
エンジン音で掻き消されるため、声音を張っても聞き取り難いのだ。
一度で此方の意図を聞いて欲しいために、タコ沢の携帯に電話を掛ける。
『はぁーい、ホシです!』
電話に出たのはホシ。ヨウは彼に簡潔な伝達をする。
バイクでは見落としてしまう景色一つひとつに目を配り、五十嵐がいそうな倉庫やコンテナの山麓に注意を配るよう指示。
またバイクの速度について来られなくなり、自分達を見失ったら一旦こっちに連絡を寄越すよう告げた。了解だとばかりにホシは電話を切る。
ヨウも携帯をブレザーに仕舞い、
「キタキタキタ!」
シニカルに笑みを浮かべた。
目前には待ち伏せていたであろう敵方の協定チーム。
普通であれば避ける、もしくはUターン戦法を取るが、自分達のお得意戦法は特攻であるゆえ避けることなどはしない。
ヨウは振り返って声音を張った。
「速度を上げろ! 突っ込むぞ!」
混乱を招くのが自分達の役目。
だったらとことん混乱を招いてやろうではないか。
狡い戦法を打ってくると思っている親玉に、直球勝負を挑んで混乱も混乱にさせてやろう。
混乱してくれるであろうキャツの表情を想像するだけで心が弾む。
なんて思うヨウも大概ワルである。