青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
次いでヨウは先ほどと同様にチャリ組に連絡を取り、その旨を話す。
「あの時の倉庫場所分かるか?」
分かるなら、確認の意味を込めて先に向こうへ乗り込んで欲しいのだが。
きっとバイク組は途中で妨害に遭うだろう。
チャリ組の方が持ち前の乗り物を駆使して倉庫に到達出来る筈。
「すぐ追いつくから。一足先に向こうに行ってくれ」
ヨウの命令に、
『マージョーで? 場所は薄っすらボンヤリ憶えているけど二人で乗り込むのは無謀過ぎない? もし敵がいたらお陀仏じゃんか』
なんて文句垂れてくる。
刹那、仕方が無さそうにホシは承諾し、もしも親玉がいたら一報寄越すからと告げて電話を切った。
遅れたら承知しないと、しっかり釘を刺して。
おーっと、こんな風に催促されたら急がないわけにもいかない。自分達も早く“例の倉庫”に向かわなければ。
「急げ、シズ。タコ沢とホシを先に向かわせた。見てあの時の倉庫がどれだったか分かるか?」
「この“港倉庫街”の倉庫には各々アルファベットと数字がペンキで記されている。
自分達がどんちゃん……起こしたのは“S-4”倉庫だ。ドデカイ倉庫だったから……そんな一目で分かるだろ……」
頼もしい発言に安心だとヨウは一笑し、運転の一切を副頭に任せた。
半月の空の下、夜風を切りながらバイク達は前方を裂くように走り続ける。
点々と前方に光をチラつかせる正体を瞳に捉え、ヨウは再び舌を鳴らした。
暗くて視界が悪いが、どうやら味方ではないようだ。
角材やら鉄パイプやらがチラチラッと目に付く。
何処に行っても敵が道を阻む。
一体全体、五十嵐はどれほどの人数を舞台に用意したのだろうか。
幾ら協定チームを引き連れてきたとはいえ、こうも行く先々に敵が待ち構えていると嫌気が差す。
「仲間達のためにも突破口を作るぞ」
言うや否やヨウは軽く腰を上げ、持っていた角材を軽く回した。
加速する風に乗り、振り下ろされる鉄パイプを角材で受け止め弾き飛ばし、先端で敵達の小手を狙う。
速度と抵抗に遭い、軽く向こうが怯む。
後退するバイク達の隙を逃さず、
「飛ばせ!」
ヨウは手を挙げて仲間達に指示。
玉城兄弟は更に相手を怯ませるために持参している爆竹に火を点し、地面、運転席に狙って投げる。
「人数が多い」
ススムは顔を顰め、バイクのスピードを上げた。
相手にぶつからぬよう器用にハンドルを切りながら、ヨウとシズが作る突破口をゴリ押しで進んで行く。
だが人数は一向に減らない。
向こうの用意周到さには舌を巻く勢いだ。
突破しては待ち伏せ、突破しては待ち伏せ、突破しては敵さんいらっしゃい。
冗談ではない状況だ。
まるで前に一歩たりとも進ませぬようにしている構えだ。
先に五十嵐がいる可能性が大になってきた。
傷付いた角材を敵に向かって投げ付け、ヨウは眉根を寄せた。
このままでは埒が明かない上に時間ばかりが過ぎていく。
幾ら特攻が得意だといっても、これでは本隊に出動合図も送れないではないか。
どうする、もっと効率の良いやり方は……。