青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
と、待ち伏せしていた敵側に異変が。
横道から別のバイクに乗った不良達が現れたのだ。
あれは、自分達に味方付いている協定チーム。
しかも自分達の協定チームではないか! なんてグッドタイミングだ。
てっきり出入り口付近で協定チーム同士衝突していると思っていたのに。
「構わず行け、荒川! 此処は俺達が受け持つ! 何人かはそっちにつかせる! 安心しろ、再結成した俺達はパワーも人数も劣ることなかれだ」
エンジン音に負けぬよう喝破してくる浅倉は、ニヤッと笑って今度こそ負けるなと片手を挙げてきた。
エリア戦争のような勇士を見せてくれ、なんて小生意気な口を叩く協定の頭に一笑し、ヨウは必ず勝ってくると握り拳を振り上げた。
援護するように自分達の脇についたバイク達にはダブル舎弟や方言丸出しの副頭・涼が乗っている。
待ち伏せしている集団には、蹴散らすように率先して相手へと突っ込む。
ヤマトチームの協定も援護してきてくれたため、先程よりもスムーズに前へ進むことが出来た。
嗚呼、この先に五十嵐がいるかもしれない。
浅倉達に感謝しつつ、ヨウは妙に鼓動を高鳴らせ緊張感を募らせていた。
五十嵐がこの先にいたら、いたら、今度こそケリをつけてやる。
仲間を攫い、チームに屈辱を味わわせ、自分達をせせら笑ってきたあのいけ好かない不良を、今度こそ自分の手で。
チームのリーダーとして親玉を討ち取ろう。
それがリーダーの役目だと、未だにヨウは思っている。
無論、これはチーム同士の喧嘩であり、チーム一丸となって戦う喧嘩だ。
しかしリーダーとしての役目・役割というものが確かに存在している。
仲間達は自分をいつも支えてくれた。
間違いを犯そうとしたら正し、時に演技をしてまで大切な事を教えてくれた。
そんな仲間達を守るため、チームを守るため、自分はリーダーとしてヤラなければならないことがある。
きっとその念はヤマトも同じだろう。
頭として一旗挙げるために、チームのために、親玉を討ち取りたい……と。
グッと体の筋肉を強張らせ、ヨウは因縁の因縁とも言える倉庫を目前にガンを飛ばす。
並列に並べられた倉庫たちの何処よりも古く、そして広さを誇る“S-4”倉庫。
向こう先に見えるのは既に到着したであろうチャリ組、乗り物に乗っていないこそ集団に追い駆け回されている。
それを目にしたのと同時にヨウの携帯が鳴り響いた。
出ると、『いる!』矢継ぎ早に喋るホシが倉庫内に五十嵐がいると一報を寄越す。
「ビンゴじゃねえか。俺って冴えてらぁ」
自身を褒め称えつつホシに了解だと返して電話を切った。
チャリ組を襲っている私服姿の不良、というよりヤンキー達は自分達の姿を捉え、数人倉庫内に飛び込む。
ボス猿に報告に行ったというところだろう。
更に自分達がホシとタコ沢を援護するように戦場に参戦した頃、倉庫からのっそりと一人の男が現れた。
半月の光を浴びて、やや青く染まっている紫髪にニヒルな笑い。
相変わらず片手には携帯、ツイッターでもしているのだろうか。
捜し求めていた親玉の登場にヨウはにやっと口角をつり上げた。
向こうも負けじと嫌味ったらし笑みを浮かべ、「よっ」と片手を挙げてくる。
「よく此処まで辿り着いたな、ゲームは楽しんでいるか荒川」
目を細め、冷笑してくる五十嵐にヨウも冷笑を返す。
「ああ。マージ楽し過ぎてワクワクしているぜ。五十嵐、超会いたかった。会いたかったぜ!」
「なっ、馬鹿、ヨウ! お前ナニを!」
シズの制止をろくすっぽう聞かず、誰よりも早くキャツの下に行くため走っているバイクから飛び降りる。