青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
「ヤマトが知れば、怒る光景だろうな」
ススムのぼやきに、
「まったくだ」
まさか本隊の存在を忘れているとは、シズは苦笑いを零した。
一点のことに集中すると周りが見えない。
揺るぎない気持ちで一点に集中してしまう。
それは今も昔も変わらない短所であり、彼の長所だ。
さてと雑談もここまでにしようではないか。
これからは自分達もバイクから降りて不良達を相手取らないとならないのだから。メッチャクチャに暴れてやろうではないか、勝利のために。
「第二幕の始まりだ……」
シズはバイクのホーンを鳴らし始める。
倣うようにススムが、玉城不良兄弟が、そしてバイクに乗っている協定達がバイクのホーンを鳴らす。
夜空に舞い上がる音は音を上塗りし、また音を重ね塗りして、一つの音を奏でる。
巨大な音は数秒しか作り出すことが出来なかったが、数秒で十二分に第二幕の合図が伝わるだろう。
そう、これから本幕が上がるのだ。
「なあに目論んでやがるんだろうな」
倉庫の出入り口付近に突っ立って様子を見つめている五十嵐は、鼓膜が破れそうなほどのドデカイバイクのホーンを耳にし眉間に皺を寄せていた。
馬鹿みたいにホーンを鳴らしているわけではないだろう。
奴等は馬鹿であるが、考え無しに動くような輩ではない。
きっとあのホーンには何か意味があるのだ、意味が。
まあ、いずれ分かるだろう。ふうっと息を吐き、五十嵐は倉庫の中に足を踏み入れながら携帯で連絡を取る。相手は古渡。
「俺だ。荒川達がこっちに来た。……ああ……ああ。こっちの人質は任せとけ。お前はもう一人の人質を逃がさないよう見張っとけよ」