青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
すぐにバイク組とは距離が出来るけど、これは仕方が無い。
日賀野も範囲内だって分かっているから、指笛で前方のバイク組に合図を送る。指笛で本隊のバイク組は左右の道を別々に進んだ。
俺達や救出隊は真正面の道を突き進んで敵がいないかどうかを目を配る。
どうやらヨウ達や協定チームが敵さんを引きつけてくれたおかげで、今のところ敵が見受けられない。
何処からともなくバイクのエンジン音は聞こえてくるけど、それまでだ。
ゴーストタウンみたいに俺達の通る道は静かな事極まりない。
好都合だと日賀野は口角をつり上げ、救出隊に行くよう指笛を鳴らす。
すると俺達から離れ、救出隊は別の道を走り始める。
その際、救出隊のバイクに乗っている響子さんと弥生から「任しとけ」「ココロは助け出してくるからね!」
イカバには何も言われなかったけど(日賀野に帆奈美さんは任せろと言っていた)、モトには「しっかりやれよ」と声を掛けられ、同じチャリを漕いでいる健太には「彼女のことは心配するな」頼もしい一言を送ってくれた。
うん、皆、ありがとう。
ココロのこと、任せたよ。
俺は俺で彼女を助けるために仕事をまっとうしてくるから。
本当は自分の手で助け出したいけど、俺は本隊に属しちまったからな。
私情で動いてもチームに勝利なし。救出隊に人質のことは任せた。
救出隊と別れることで、本隊バイク組とも離れちまった俺達は完全に孤立。
傍から見れば“港倉庫街”でポツンとサイクリングを楽しんでいる馬鹿な高校生二人組に見えなくも無い。
だけどすぐに皆と合流するつもりだし、俺等は俺等でやることがあるしな!
苦手な不良を乗せてチャリをかっ飛ばす俺は、ハンドルを切って日賀野にこれからどう動くか指示を仰ぐ。
「全体の敵数と配置を知りたい」
数は無理でも配置を知りたいと唸る日賀野は俺に言う。
“港倉庫街”を一周しろと。しかも最短ルートで。
ははっ、またとんだ無茶振りを。
けど命令されたからにはやらないとっ、俺が殺される!
「日賀野さん、向こうに見える倉庫列のどれか記番を教えて下さい。今の場所を把握したいんで」
倉庫に書かれている記番を教えてくれるよう促す。
一応、これでも地形を短時間で頭に叩き込んだんだぜ!
ご丁寧に倉庫に記されている番号まで手書きの地図に書かれていたから、必死に頭に詰め込んだという。
「A-9だ」
記番を教えてくれた日賀野に相槌を打ち、俺はしっかり掴まっておくよう注意事項を伝達。
最短ルートで行くなら超荒運転でいかないと。
落ちても知らないんだからな!
「ああ、そうだ。プレインボーイ、この俺を落としたらどうなるか……落とさないよう運転しろ。いいか? なぁー?」
後ろに乗っている指揮官に強く肩を握られて、俺はカッチンコッチンに表情を強張らせた。
こ、コイツは協調性というものをご存知なのだろうか。
一々々々俺を脅しては楽しんでっ、この苛めっ子!
エス、ドエス!
俺はエムじゃないけど、お前ほどSっ気の強い奴もいねぇよ!
バァーカ!
犬が嫌いで苦手で怖いくせにっ、くせにー! この犬っころブッコロしゅんっ! 犬と結婚しちまえー!
あー、スッキリした。
心の中の俺はいつでもどこでも最強だからな。
どんな不良相手でも悪態悪口言えちゃうん「プレインボーイ、お前。今、すげぇ俺のムカつくこと思っていないか?」
日賀野のタイプは悪(あく)とエスパーのようだ。人の心を容易に見透かそうとする。
取り敢えず、なんの取り得もないノーマルタイプの俺との相性は最悪だってことだな。コワッ、まじこの人、怖っ。下手なことできないじゃんかよ!