青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―



【北D-7倉庫裏】



健太曰く人質の片割れ、荒川チームのココロは“北のD-7倉庫”という所にいるらしい。


俺の睨んだとおり、北エリアは倉庫数が多いから人質が軟禁するにはもってこいの所のようだ。


気になる点はココロと帆奈美さんを別々の場所に拘束しているところ。


特に帆奈美さんが五十嵐と一緒にいる点だけど、取り敢えずまずはココロの救出に専念しよう。


帆奈美さんの救出はその後だ。


五十嵐と一緒って情報が確かなら、遅かれ早かれきっと『挟み撃ち』作戦をするであろうヨウや日賀野達が彼女を見つけ出すだろうし。


どっち道、ココロを助け出さないことには東エリアにいるであろうヨウ達の下には行けない。


チャリでD-7倉庫裏まで来た俺と健太は、裏口から侵入するためにこっそりコソコソ乗り物から降りてドアの前に立つ。


古く錆びた扉の取っ手を回してみるけど、ガチャガチャガチャ――予想していた通り、案の定、内鍵が掛けられている。


俺じゃどうすることもできないから、健太に出番を譲る。


彼は片膝立ちすると、目を眇めて鍵穴の具合を見た後、ペロッと上唇を舐めて制服のポケットから針金を取り出す。


故意的に、そして歪に曲げられた針金は二本。


小さな鍵穴に挿し込んで上下左右、ロックを解除しようと試みている。


その間、俺は見張り役。

不良達が来ないかどうか神経を研ぎ澄まして、周囲に気を配っていた。


「開きそうか?」


ガチャガチャと作業中の健太に声を掛けると、


「任せとけって」


意気揚々とした返答が飛んで来た。

本人曰く高校に上がってピッキングの腕、更に磨かれたらしい。しかも日賀野のおかげさまで。



「あの人の無茶振りのおかげで、随分多くのドアを無理やり解除したよ。

おれさ、ヤマトさんに気に入られたのがこの手の器用なんだ。
チームに入れてもらったのも、やっぱピッキングからでさ。

あれは入学して直ぐのことだったかなぁ。

たまたま同じクラスになったアキラさんと不運にも関わりを持った地味のおれは、彼に仲間を紹介するってヤマトさんの前に連れて来られたんだけど……ほら、おれは調子ノリを封印しているって言っただろう?

だから面白さも何にも取り得が無くて、紹介してもらったはいいけどヤマトさんは最初こそおれのこと興味すらない目で見ていたんだ。


ナニこいつ、超取り得の無さそうなフツーのヤツじゃん、みたいな眼をガンガン向けられたっけ。


おれ自身も表向きだけの付き合いにしようと思っていたから、興味を持たれないでいい。寧ろ安心だと思っていた。

時期がきたら、とっとと顔を忘れてもらおうと目論見を立ているほど、当時のおれはヤマトさん達とあんま関わりたくなかったんだ」


いつの間にか健太は語り部に立った。

ずっと胸の内に溜まっていた過去を俺に語ってくれる。

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