青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
ところかわって東S-3倉庫裏。
東S-4倉庫からより近い倉庫の裏に潜んでいる指揮官不在の本隊は今しばらく待機中である。
何故か? 上記のとおり、指揮官が不在だからである。
勝手な行動もできるにはできる。が、したら最後、行動後のことが追々面倒事と化すため本隊はおとなしく待機しているわけだ。後からやって来た協定チームと共に。
嗚呼、何処からともなく聞こえてくる乱闘の声や音、ぶつかり合っているであろう闘志。早く喧嘩に加担したいというのに、オアズケ状態なんて酷だ。
仲間を助けたい一理、暴れたい回りたい大多数を占めているワタルとアキラは揃って溜息をついているところだった。
ボーっとバイクのハンドルに凭れ、力なく肘をつくアキラは手持ち無沙汰ゆえ、バイクの後ろに視線を投げる。
そこには勝手に自分のバイクに腰掛けて背中に寄りかかり、だれているワタル。仕方がなしにキャツを相手にすることにした。
「重いぞい。誰の許可を得てワシの背中を借り取るんじゃい」
気だるにクエッションしたせいなのか、向こうも同じ心情なのか、「僕ちんの許可っぴ」気だるなアンサーが返って来た。
「そーけぇそーけぇ」
そりゃいい度胸だとアキラは気だるのまま答え、取り敢えず重いから寄り掛かるなと注意。
背中くらい良いじゃないかとワタルは欠伸を噛み締め、ドケチな男だと悪態。
ややカチンときたアキラは「もう休憩かえ?」体力が衰えたんじゃないかと指摘。
するとワタルの方がカチンときたため、両者視線を合わせて軽く、それこそ線香花火ほど淡く、しかし非常に激しく視線を交じらせる。
「暇はニンゲンを駄目にするよんさま。ちょーっち暇ならお相手願えないカナカナカナ? アーキラちゃーん」
「願ったりなことじゃーい。喜んでお相手するぞい、ワータル」
ニヤニタァっと二人は口角をつり上げ、刹那、バイクから飛び降りて対峙。
ウォーミングアップがてらにキャツの顔面を殴り飛ばしてやる! と、思っていたのだが、傍観者に回っていたキヨタがストーップとばかりに二人の間に割って入った。
「なあにしているんっスか、今は手を組んでる者同士っスよ! ちゃーんと仲良くしないとリーダー達に怒られるっス!」
「んもぉ、キヨタちゃーんのイケず。大体“これ”がいなくなっても支障でないから大丈夫だってんこもり!」
“これ”呼ばわりされ、アキラは極上の笑みを浮かべた。
心情は「貴様、人様を見下すなんざ何様だ?」である。
「そっくりそのまま返すぞい。さーっきまで“ジジイ”みたいに休息を取っとったくせにのう」
“ジジイ”呼ばわりに、ワタルは笑みを浮かべたまま両手指の関節を鳴らした。
心情は「今なんっつった? あ゛ーん?」である。
バチバチと火花を散らす二人に呆れ返りながら、「まあまあ」キヨタは仲裁を買って出る。
ここで喧嘩をしたって後々やって来るであろう指揮官にどやされるだけだ。仲良しこよしをしておくのが得策だと中坊は諭す。
「生意気じゃいお前。まだ中坊のくせに」
うぃーっとキヨタの耳を引っ張るアキラ。
そうだとばかりにワタルも耳を引っ張り、
「アイタタタ!」
キヨタはこういう時だけ仲良くなるなんて卑怯だとかぶりを振った。
どうにか抓り地獄から解放されたキヨタは元親友同士だったという不良二人を交互に指差し、グッと握り拳を作った。
「とにかく喧嘩は駄目っス! 日賀野とケイさんが来るまで、此処でおとなしく待機するっス!」
「やけに気合入っているねぇ、キヨタちゃん」
「そりゃそうっスよォオオオ! 大尊敬しているブラザーが、果敢にもトラウマ不良を乗せて闘っているんっスからぁあああ!
俺っち、ケイさんのためにも本隊の秩序は守りますっスよ。ケイさんは俺っちに言ってくれました。『お前、俺の元気の素だよ』って」