青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―



元凶は分裂事件でご尤も、なのだが大喧嘩した理由はもっと別にあったような。

そう、自分達は今まで何でも気が合い、大抵同じ意見を口にする仲だった。


だから別々の選択肢をすると思わず、大喧嘩の末に互いに片意地を張って今に至る。


「なーんで“大”喧嘩したんだっけ?」


ワタルは素朴な質問を相手にぶつけてみる。

鼻で笑われるは承知の上だった。


「くだらん理由じゃったような」


アキラは笑うどころか、首を捻って何だったっけと過去を振り返る。


忘れてしまうほど至極くだらないものなのだろう。

どんなに記憶のページを捲っても、そこだけ白紙状態である。

多分、思い出したら思い出したで、「なんだ。くだらないものだ」と笑ってしまうに違いない。


きっと“大”喧嘩する原因なんて極々小さいものだったのだ。


スーッと溶ける紫煙を見つめつつ、灰を落として、ワタルとアキラは揃ってマイルドセブンを味わう。


互いに何を思い、喫煙しているか分からないが、大体自分と同じことなのだろう。腐れ縁だ。対峙する関係になっても分かるものは分かる。


「少しだけ、惜しい気がするのう。この時間」


それはアキラの嘘偽りない本音に違いない。

半月を仰いでいたワタルは、皮肉を込めて笑うところだろうかと脳裏を掠めたが、結局は別の表情と気持ちを相手に向けてしまう。

何故なら、不本意ながらも自分も同意見なのだから。


「そうだねん。惜しい気がする」


吐露、そして微苦笑を零し、

「本当に惜しいっぴ」

ワタルは半分ほど吸っていた煙草を地に落とした。

くだらない雑談も此処までのようだ。聞こえてくるバイクのエンジン音とチャリのベルに各々顔を上げる。


そこには合流したであろう新たな協定チームの仲間と指揮官。


やっとおいでなすったとアキラは文句を垂れ、ワタルは相槌を打ち、チャリに駆け寄ったキヨタは「えええ……」と遺憾の声を上げた。



「てっきりケイさんが登場してくれると思ったのに……なんだ。ヤマトさんにモトか」



がっかりだとキヨタは肩を落とす。

折角本隊の秩序を守っていたことを報告し、ちょいと男を見せた武勇伝を語ろうと思っていたのに。

現れた親友にキヨタは二度溜息をついた。

モトはといえば、キヨタに向かって引き攣り笑い。


「お前……オトモダチに随分な言い草じゃねーのソレ? オレ、ヤマトさんを乗せて必死に此処まで来たんだけど?」

「そうは言ってもさぁ。例えばモトがさぁー、ヨウさんが現れると思って期待をして待っていたら、別人がやって来ました。なら、どう思う?」


途端にモトはキリリッと表情を真顔にした。


「そりゃもうガッカリ度パない。『いや、お前お呼びじゃねえし!』になる! ヨウさんはオレの大尊敬している兄分なのに……現れた奴が別の奴って!」

「俺っちもそれだってぇえええ! ちょ、なんでこの人を降ろして、ケイさんを乗せてこなかったんだよぉ。向こうにヨウさんいるんだし、この人いなくてもッ、アイッデー!」


ゴンッ、ゴンッ!

キヨタとモトの頭に容赦ない拳骨が落ち、「痛ぇ」「なんでオレまで」中坊組は揃って頭を押さえる。



勿論制裁を下したのは本隊の指揮官。


無駄口叩くなと鼻を鳴らし、チャリの後ろから降りると代わりにキヨタが乗るよう指示。自分はアキラのバイクに乗ると言うのだ。


早足で行動するヤマトは、移動中も協定チームや仲間にすぐ発進できるよう体勢を整えるよう声音を張った。


険しい表情を崩さず、


「グズグズするな」


時間は押していると催促してくる。


一刻も早く『挟み撃ち』作戦を開始したいようだ。やや焦っているように見えなくもない。


同じチームのアキラは懸念を抱き、指示しているヤマトの肩に手を置く。

その手を流し目にするヤマトは、「安心しろ」冷静は欠かしてないとシニカルに笑みを浮かべた。

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