青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―



「日賀野の、望んでいる……答えを選べば、お前は……ただの腰抜けだ」

「このままじゃ関係ないお前がッ、今以上に怪我するんだぞ! 分かっているのかよ!」 


「分かってないのは……お前だ、田山! ……どちらを選ぶべきかッ、馬鹿でも分かるだろ」


掴んでくる手が震えている。

利二、やっぱお前やせ我慢しているじゃないか。

日賀野に次どんなことをされるか、スッゲービビってるじゃないか、スッゲー怯えているじゃないか。


「馬鹿はどっちだよ。この場を乗り切る方が先決だろ。
どうせ、俺、成り行きで舎弟になっただけだ。日賀野の舎弟になろうとも、ヨウの舎弟になろうとも変わりやしないッ、俺は別にどっちの舎弟でも」


「それで、お前は良いのか? ……良くないだろ……後悔するぞ、絶対に。カッコつけるな」

「かッ、カッコつけているのはどっちだよ!」


手ぇ震えているくせに、俺と同じように怯えているクセに、何が“後悔するぞ”だよ。

不良恐いだろ、お前……痛い蹴り喰らってるだろ。


これ以上、怪我したくないだろ。

なのに何で止めるんだよ。決心鈍るじゃないか。


俺だって本当は日賀野の望んでいる答えを出したくなんかないぜ。出したくない。出したくないけどさ。


「後悔するのはお前だけじゃない……」


利二が胸倉を掴んでいる手を握り直す。




「自分も後悔する……絶対に、ぜったいに」




上擦った利二の声を耳にした俺は目を見開いた。

言っている意味を理解して俺は思わず泣き笑い。


利二の気遣いと優しさと我が儘と勝手さと、色んな感情を向けられて俺の気持ちは混乱に近い。困惑に近いっつーのかな。途方に暮れているっつーか。

どうすれば良いか分からないって感じ。何が正しくて何が間違いなのか、今の俺には分からない。


ただ一つだけ、ヤラなきゃいけないことがある。日賀野に聞こえないように声を窄める。


「利二。チャリ、鍵掛けっぱなしだから。俺に構うな……」

「た、ッ、待て」


掴まれている手を払って俺は立ち上がると、日賀野を見据えた。


「終わったか?」


目論見を含んだ不気味な笑みに目を背ける。


利二の声が聞こえたけど無視した。


態度で答えが分かったのか、日賀野が携帯をポケットから取り出して中を開く。

よくよくその携帯を見ると、アレ、俺の……てッ、嘘だろ。いつ盗られたんだよ!


ロックを掛けていないから、簡単に中を開ける。

凄く焦って返すよう言ったんだけど、日賀野は「エロ画像でもあんのか?」って俺の焦りようを鼻で笑ってくる。



そ……そんなのはねえけど、いや、そういう系サイト光喜と見たことは……って、チガウ! 人様に携帯弄くられるって良い気分しねぇじゃんかよ! っつーか泥棒だよお前!



取り返そうとしたその瞬間、俺に携帯を突きつけてきた。


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