青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
――田山は、古本屋の近くの人通りの少ない自販機にいます。
真っ向から吹きつける風を受けながら、ヨウは目まぐるしく過ぎていく景色を睨み付ける。
見事に染まっている金髪と交じっている赤メッシュが、吹き付ける風によって大きく揺れ靡くが一切気にする余裕が無かった。
自分の舎弟があの日賀野大和に目を付けられた。
しかも舎弟になれと迫られ、ケイは自分を裏切れないからと断った。
ケイは友だけを逃がして今もヤマトと共にいるだろう。
ヤマトのことだ、断ったケイをどうするかなんて目に見えている。
「俺の舎弟になれませんか。そうですか。うんじゃこの話はなかったことに」なんて軽く事を済ませてくれる奴ではない。断ったら最後、無傷で済む筈がない。
ヤマトの性格を知っているからこそ、ケイの安否が気になる。
下唇を噛み締め、ヨウはポケットから携帯を取り出す。ケイからの連絡はまだ無い。
ケイとは成り行きで舎兄弟になった。
自分は不良、相手は普通そうな少年、正反対の自分達が舎兄弟になった理由は単純。
ケイという存在が面白かったから。
チャリ爆走させて自分達にぶつかってきそうになったあの日、タコ沢を踏ん付けてチャリを飛ばしていたケイが妙に可笑しかった。
翌日、ケイの姿を見かけて同じ学校だと知った。
礼がてらに話してみたら意外と馬の骨が合う奴だった。
地味で日陰な奴なのに、話してみれば自分と同い年なんだって思った。
不良の自分と話が合わないなんて思い込んでいたからこそ、ケイと話が合ったことに何となく新鮮さを覚えた。
タコ沢と一緒に逃げた時、チャリに乗せてもらいながら「こいつマジで面白い」という気持ちは一層高まった。
ケイのようなタイプとつるんだことが無かったせいだろう。
こういうタイプを舎弟にすれば面白いんじゃないか、なんて軽はずみな気持ちで舎弟を作った。それがケイだった。