コロちゃん



柏木君は、今日誰を選ぶのかなぁ。
なんてのん気に見ていたら、柏木君は
女の子の群集をかき分けて
私の目の前にやってきた。


「…鈴木さんだよね?」

「は…はい…、鈴木ですけど。」

「今日は君を選ぶよ。」

「嘘…、わ…わ…わわ私?」


頭ん中が真っ白でパニック状態。
柏木君は爽やかな笑顔を向けて
私の腕を引っ張っていった。

周りの女の子たちが、羨ましがってる
声が耳に入るわけもなかった。



手が、柏木君の手が。
彼の体温が、私に伝わってくる。

ずっと憧れていた柏木君が目の前に居て
私の腕を引っ張っている。

触れてる、あの柏木君に。
まるで夢を見てるみたい……


「か…かかか柏木君っ!」

「ん?なに?」

「あの……これ、どうぞ。」


私は手作りのクッキーを手渡す。
可愛いくラッピングしたつもり…。


「…クッキー、か。」

「あ…えう…えと、嫌い?」

「鈴木さんは、出回ってる
俺のプロフィール見た?」

「…プロフィール?なにそれ。」

「俺さ、プロフィール適当に書いたから
好きなものパンって書いたんだよね。」

「パン好きじゃないの?」


柏木君は流し目で私を見る。


「誰も本当の俺を分かってくれない。」

「…言わないと分からないじゃん。」



柏木君は歩く足をピタリと止め、
カバンを床に置いた。


「俺、クッキー好き。パン嫌い。
チョコチップだともっと好き。」

「チョコチップ……?」

「何だよ!餓鬼臭いと思ったんだろ!?」

柏木君は腕で真っ赤になった
顔を隠して喋る。


「好き。」

「え?」

「私も、チョコチップ好き!」

「…おう。だよ…な//」


顔真っ赤にしちゃって可愛いな……。


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