生きたがりの青年と死にたがりの少年

直後、一夫爺さんは、果てない暗闇の遠くを見つめた

「ただ悔いになったのは、婆さんを残してしまうことだな。」

彼の細い目にはうっすら涙が張られていた

―奥さん?

「そう。一つ年下の、かわいらしい嫁さんなんじゃ。」

一夫爺さんは、自分の奥さんの話をし出した

奥さんの名前は、ちえ子(ちえこ)

中学生の時に知り合った

ちえ子さんは、後輩にあたり、一夫爺さんはいつも可愛がっていた

それから恋に発展し、一夫爺さんが24歳のときに結婚

2年後に長男を授かり、男二人、女三人の子供に恵まれた

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