生きたがりの青年と死にたがりの少年

彼女の頬を、涙が伝った。

「だから、おろしたの。ううん、殺したの。」

彼女の目に溜まった涙が、一気に伝っていった。

「可哀想な子供を生んでしまったの…。夏実、犯罪者なんだ…。だから、いっそのこと、もっと罪を犯して、傷付きたかった。」

「どうして?」

「あの子は、夏実なんかよりずっとずっと苦しかったはずだから。だから、同じ苦しみを味わらないといけない。」

それは違う。…多分。

いや、絶対に。

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