主婦トピ Happy Birthday
「きみ、きみ」

早足で通り過ぎようとする俺を黒い服を着た男が呼び止めた。

「ボク、芸能プロの者だけど。モデルとか興味ない?」

名刺を出しながら、その男は早口にまくし立てた。

「ボク、有名なモデルこうやって発掘してきたんだ。今日ここできみと出会ったのはきみの運命が変わる日だからかもしれないよ」

無視して歩く俺に耳元でそう男はささやいた。
俺は、ふっと歩みを止めた。

「運命が変わる日?」

「そう、きみならすぐにでも表紙飾れる。今はどこにも所属してないの?」

「運命はいいほうに変わるのかな?」

「もちろん。スポットライトがきみに当たってるのにきみはそれに気づかないのか?」

「それなら、よかった」

「じゃ、そこのカフェでゆっくりと話を・・」

「悪い。今日はそんなことしてるヒマはないんだ」

俺の腕をつかまんばかりにして歩き出そうとした男の右腕を軽く払った。
虚をつかれたように俺を見る男の顔をまっすぐに見て、俺は微笑んだ。

「今日は世界で一番大切な日だから」
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