【コメコン2】秘密捜査官・西董子
「あ」
原田刑事が、思わず声を上げた。
部屋の雰囲気が一変し、緊張度が一気に高まる。
聞こえてきたのだ。
壁に耳をあてるまでもなく、それは全員の耳に届いた。
古い鉄階段を、上ってくる音。
足早にそれはやって来る。
その足音は西刑事の部屋の前を通りすぎ、案の定隣の部屋のドアがノックされた。
来た…。
ドアを開ける音がして、一般的な宅配業者とのやりとりが後に続く。
「ノラネコヤマトでーす」
「あ、どうも~」
哀れな宅配業者。
自分が無差別殺人に荷担していることに、彼はまだ気づいていないのだ。
「ありがとうございました、良いお年を!」
宅配業者の足音が、遠ざかっていく。
ドアが閉まり、荷物を受け取った住人が小走りで部屋に戻ってくる。
中身を見るのを、待ちきれないというように。
「来たぞ、来たぞ!」
「おー!早く開けようぜ」
部屋がにわかに活気づいた。
クシャクシャと、包み紙を破る音。
「いつ突入しますか?」
銃に手をかけながら、西刑事がささやいた。
「落ち着け…彼らが銃を箱から出した、その瞬間に現場を押さえるぞ」
西刑事の部屋は、臨戦態勢に入る。
「出した瞬間って、いつですか」
「よ、よく聞こえないな」
隣室のテンションは上がり、2、3人の男たちが上ずった口調で何かを話している。
しかし紙を破る音に紛れ、話し声が聞き取れない。
自然に皆が身を乗り出し、先を争うように薄い壁に耳をあてた。
次の瞬間…