【コメコン2】秘密捜査官・西董子
作戦名、「砂漠のナマケモノ」。
脳科学者・茂木教授が提唱する
「少しずつ動いている物体に、人は意外と気づかなかったりするものだよ」
という最新の実験結果を元に考案された作戦だ。
見た目には分からないほどのスピードで移動する事により、室内の男たちには気づかれずに中に侵入するのだ。
少しずつ、少しずつ。
西は心の中で呪文のように念じながら、ドアノブをゆっくり回した。
扉が枠から離れ、わずかな隙間が開く。
幸い、扉はきしむことなく滑らかに開いた。
あせってはいけない。
ここからが正念場だ。
飽くまでも、少しずつ。少しずつ。
扉の隙間から、中の会話が今度ははっきりと、西の耳に届いた。
「殺しだ。さっさと片付けないと、まずいぞ」
低い声で、男が言う。
西の足が、震えた。
しかし、この任務を遂げなければならない。
西は自分に言い聞かせる。
―大丈夫。
自分を信じて、前に進もう。