【コメコン2】秘密捜査官・西董子
体がやっと通り抜けられる程度に扉を開くと、次はとうとう、室内へ一歩を踏み出す。
西は、一昔前に流行った芸人の
「一日3ミリバス停ずらす!
二年を費やし自宅の前へ!
武勇伝、武勇伝・・・」
というフレーズを頭の中でリフレインしながら、室内にゆっくりと、最初の一歩を落とした。
ここまでは順調だ。
ブユウデンデン、デデンデン。
西は、1秒あたり3ミリメートルほどの速さで、超低速歩行を続ける。
その姿はまるで、ナマケモノが超スローモーションな太極拳をしているかのようだ。
「砂漠のナマケモノ」作戦が功を奏しているのか、室内の男たちはまだ、西の侵入に気づく様子はない。
グレーの事務机が何台か、向き合うように並べられた飾り気のない部屋。
男たちは机に座ったり、窓際に立ちブラインドの隙間から外の様子を眺めたりと、思い思いに過ごしていた。
西は超低速歩行を続けながら、一番端の、誰も座っていない机を目指す。
あともう少し。
西の手がとうとう、目指す席に届こうとした、その時だった。