【コメコン2】秘密捜査官・西董子
「バカヤロー!今何時だと思ってるんだ」
西が壁の時計を見る。
「10時8分です」
原田刑事の怒りのボルテージは、急上昇。
もともとボリュームたっぷりな眉毛を、怒りでさらに逆立たせた。
「時間知りたくて、聞いたんじゃないよ!始業時間は8時半なのに、なんで今来てるんだ、って聞いてるんだよ!」
「そう!それなんですが、聞いてくださいよ!事件が起きたんです」
西は、目を丸く見開いた。
「私が寝ているうちに、何者かがうちに、不法侵入したんです」
「なんだ?お前、大丈夫か」
原田刑事は、パブロフの犬のように「事件」という言葉に単純に食いついてきた。
刑事になって、早十余年。
事件のない平和な一日は、彼にとっては退屈でつまらない一日だった。