きみがため

僕が無意識にここに足が向かったのも、同じ理由だったのかもしれない。

なぜだか心が温まり、自然と笑みが零れた。


「貴女の名を、教えていただけますか」


彼女はぱっと顔を上げ、少しはにかんで笑む。


「八重と申します」


八重。

僕はこの響きを刻み込むように、心の中で何度も呟いた。


「僕は沖田です。新撰組一番隊組長の、沖田総司」


八重は幾らか驚いていたようだけれど、僕が心配していた畏怖は感じていないようだった。
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