きみがため
土方さんはフッと目を逸らすと、微かに聞こえる程度の小さなため息をついた。
「まぁ良いが。一番大事な物を見失うんじゃないぞ」
そう言い残して土方さんは自室に戻って言った。
一番大事な物、か……。
僕にとって一番大事な物は、紛れもなくこの新撰組だ。
ふと瞼を閉じる。
僕は、僕の正義を貫くためならば、修羅にもなれる。
そうして此処、新撰組の中で散ってゆく覚悟もある。
それが僕の誠だから。
ただ、閉じた瞼にチラチラと映り込むのは。
花のような八重の笑顔。