きみがため
そんな日々の中で、町を抜けて河原に居る八重を見つける瞬間が、僕にとって最高の幸せだった。
いつも変わらない、花のような笑顔。
ふっ、と心の中の張り詰めた糸が緩むような感覚になる。
「近頃、お忙しいようですね」
八重が遠慮がちにそう言うと、僕は少し眉を下げてみせる。
「あまり此処に来られなくて、すみません」
言ってから、僕はハッとする。
まるで八重が僕に会いたがっているような風に言ってしまった。
会いたがっているのは、外ならぬ僕なのに。