きみがため
「平気ですよ。そうだ土方さん、稽古の相手して下さい」
そしてパッと立ち上がったけれど、足元がぐらりとふらついた。
「総司……」
一つ、ため息をついて。
また笑う僕。
「うーん。土方さん相手じゃ流石に疲れちゃうし、今日はやっぱり良いです」
何か言いたげにしている土方さんを残し、僕は剣道場を後にした。
掴み所の無い男だと、よく言われる。
掴まれなくて良い。
掴まれて、縛り付けられるくらいなら。
僕は一生、浮草のような男で良い。