きみがため
休めと言われても、自室に篭るのはあまり好きではない。
ただ呼吸するだけの植物になってしまったような気になる。
僕は汗をかいた着物を脱ぎ、薄い灰色の着物に着替えると、ふらりと外に出た。
あてもなく歩いていると、自然と足が向かうのはいつもの河原。
だけど八重の姿を見つけることはできず、僕はいくらかがっかりした。
でもいつもと違う時間だし。
八重が来れない日だってあるかもしれない。
帰ろうかと思ったけれど、ふと頭に浮かんだ。
確か八重はかんざし屋の娘だったな……。