きみがため
僕はそのまま町に向かった。
甘味処にはよく行くけれど、かんざし屋には行ったことがない。
もちろん場所も分からないから、通りの色んな店をチラチラと覗きながら歩く。
しばらく歩くと、可愛らしい髪飾りを並べた店を見付けた。
店番の姿が見えないが、奥の方で人の気配がする。
少し躊躇いながら僕は店に入り、並べてある髪飾りを手に取って眺める。
大衆向けのものから、華やかなものまで沢山ある。
綺麗だな。
「いらっしゃいませ。……あっ」
「やぁ」