きみがため

「え、沖田様、どうして……」


当然だけれど、突然僕がやって来たことに八重は動揺しているようだ。


「今日は非番なんだよ」


僕がにっこりとしてそう言うと、八重はいくらか頭が整理できたようだ。


「ですが、沖田様がこのような処に……」

「綺麗だね、これ」


八重の言葉を遮って、僕は一つの玉かんざしを手に取る。

薄い桜色のそれは、華奢でとても品が良い。


「これ、貰える?」

「え?……あ、はい」
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