きみがため

代金を渡すと、八重は少し陰った表情で受け取る。


「……どなたかに差し上げるのですか?」

「え?」

「いえ、何でもありません。ごめんなさい……」


僕はますます落ち込む八重に、くすりと笑った。


「そうだよ。贈り物」

「そうですか……」

「はい、どうぞ」


僕は手に取った桜色の玉かんざしを八重に差し出す。


「……え?」


八重はその少し垂れた目をパチパチさせている。

その表情が愛らしくて、僕はまた笑顔になる。


「だから、八重さんに」
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