きみがため

「い、いけません! 私なんかに、そんな……っ」

「お願いだから受け取って? きっと似合うよ」


僕はよく土方さんや近藤さんにお願いをする時のような、人懐っこい笑顔を向けた。

八重は観念したようで、そのかんざしを怖ず怖ずと受け取る。


「……ありがとうございます。大切にいたします」


そうして深々と頭を下げた。

パッと頭を上げると、八重は纏めていた髪をぱさりと解く。

そして今あげた桜色のかんざしで結い直した。
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