きみがため
「では、預けます」
「え?」
「そのかんざしを沖田様に預けます」
先程までの頼りない表情から一変し、しっかりと強い瞳。
「私が返せと言うまで、預かっていて下さい」
そう言ってふわりと笑った。
なんだか敵わないなぁ、この人にだけは。
「うん、分かった。預かっておくよ」
僕は八重の手からその使い込まれたかんざしを受け取る。
「お優しいのですね、沖田様」
八重はホッとしたようにそう言って笑うけど、僕が優しい訳じゃない。
優しいのは君だよ、八重。
君から『預かった』かんざしのおかげで、僕はいつも八重を近くに感じられそうだ。