きみがため

僕が気丈で居られるもう一つの理由。
八重から預かったかんざしを、懐から取り出す。


「八重……」


お守りと言うものは、死にたくないと抗うための物だと思っていた。

だけど、そうじゃないみたいだ。

八重のかんざしは、戦うための強さを僕にくれる。

大切な貴女の明日を守りたいと言う気持ちを、奮い立たせてくれる。


「……会いたい」


思わず口をついて出た言葉。

出陣のない時はたいてい自室で療養。

つむった瞼の裏に、何度八重の笑顔を浮かべただろうか。


僕はかんざしをぎゅっと握った。
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