きみがため

ぐらぐらと歪む視界の中で、赤い掌だけが鮮明だった。

僕の身体も、もう壊れ始めたみたいだな。

だけど。
完全に動かなくなってしまうまでには、まだ時間がある。

まだやれる。


「沖田。しっかりしろ!」


曖昧になる意識の中で近藤さんの声を聞いた。

僕は血の付いた手をぐっと握り、その手の甲で口元を拭う。


「……はい。大丈夫です」


いつものように僕は笑った。

近藤さんは何か言いたげにしていたけど、そのまま肩を貸してくれた。

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