きみがため
遠目にでも、彼女の肌が絹のように美しいのが分かる。
その透き通るような肌の、頬だけがほんのりと桜色をしていた。
河原に咲く野花を摘んでいるようだ。
歳は僕と同じくらいだろうか。
彼女は蒲公英の綿帽子を一つ摘むと、ゆっくりと息を吹き掛けた。
小さな白い綿毛はそのまま風に乗り、チラチラと空に舞う。
その一連の動きがあまりにも美しくて、僕はしばし見とれていた。
すると飛んで行く綿毛を追った彼女の視線が、風下に居た僕のそれとぶつかった。