きみがため

近藤さんの心配を無下にしたことを少し申し訳なく感じながら、僕は見回りを続けた。

街を抜け、またいつもの河原にたどり着く。


トクン、と高鳴る心臓。

何度あの横顔を思い浮かべただろうか。

あの華奢な白魚のような指を握ることを、何度想像しただろうか。


「……八重さん!」


僕の呼びかけに振り向いた八重は、花が咲くように笑った。


あぁ、これだ。

この瞬間なんだ。

僕が何より温かい気持ちになれるのは。


「お久しぶりです。沖田様!」
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