きみがため
*朽ちない想い

僕はそのまま河原を後にした。
迷いが出る気がして、振り返ることはしなかった。

これで良かったんだ。
これがお互いにとって最善なはずだ。

ただ心残りがあるとするなら、八重の気持ちを聞いてみたかった。

そう思ってすぐ小さく自嘲する。

聞かなくて良かったんだ。

もしも八重が僕を慕っていてくれたなら、僕は八重を手放せなかっただろう。

否応なしに、ずっと僕の傍に置いただろう。

そして逆に、他に好きな男が居たとしたら。

僕は嫉妬に狂い、その男を斬ってしまいたくなっただろう。

< 49 / 71 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop