きみがため
*朽ちない想い
僕はそのまま河原を後にした。
迷いが出る気がして、振り返ることはしなかった。
これで良かったんだ。
これがお互いにとって最善なはずだ。
ただ心残りがあるとするなら、八重の気持ちを聞いてみたかった。
そう思ってすぐ小さく自嘲する。
聞かなくて良かったんだ。
もしも八重が僕を慕っていてくれたなら、僕は八重を手放せなかっただろう。
否応なしに、ずっと僕の傍に置いただろう。
そして逆に、他に好きな男が居たとしたら。
僕は嫉妬に狂い、その男を斬ってしまいたくなっただろう。