きみがため

なんて、我が儘なんだろう、僕は。

だけどこれが有りのままの僕なのだから、どうしようもない。

八重にこんな僕の黒い部分を晒すことにならなくて良かったのかもしれない。


心なしか重くなった足を擦って歩くように、屯所に戻った。


「沖田、帰ったのか」


自室に戻る途中、土方さんに出くわした。

なんとなくわずかに俯いたまま、笑顔を作る。


「はい。今戻りました」

「……何かあったのか?」


僕は土方さんの真っすぐ突き刺さるような視線から目を逸らす。


「いいえ。何もありませんよ」


それだけ言って笑顔を向け、土方さんの脇を抜けて自室に戻った。
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