きみがため

そんな時、僕はいつも懐のかんざしを確かめる。

僕はそれで八重の笑顔や、八重への思いを思い出すことができる。

それは同時に、僕に僕自身を感じさせ、不思議と穏やかな気持ちになれる。


「沖田、大丈夫か?」


近藤さんが僕に問う。

その「大丈夫」にどんな意味が含まれるのかは分からないけど。


「ええ、大丈夫です」


僕はにっこりと笑って、そう答える。

あらゆることに、僕は覚悟ができているから。

身体のこと。
人を斬り続けること。

愛しい人のこと。


僕は夜叉となり、赤く染まった血の道を走り抜けると決めたのだ。

後戻りはできない。
する気もない。

僕はもう。
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