きみがため
僕は独りで自嘲した。
何かにすがるのは嫌いなはずなのに。
八重から預かったかんざしは、すっかり僕を虜にした。
「……ッゴホ!……未練が残るな」
だけど、会えない。
こんなにも血の匂いと病に染まった僕を、君はきっと嫌悪する。
そんなのは堪えられない。
しばらくして、大政奉還が行われた。
幕府の時代も終わったのだ。
僕ら新撰組が守って来た物が、目の前で音を立てて崩れていったようで。
僕は結局、この血に染まる手で何をしてきたのだろう。
目を閉じると、そこはどす黒い赤だった。