きみがため
大政奉還後も世はそう簡単に落ち着くはずもなく。
新政府側が挑発的な態度を取ってきた。
旧幕府側はそれを討つべく入京することとなった。
「僕も、行きます」
もうすでに人に支えられないと起き上がれないような僕。
そんな僕の、必死の訴え。
近藤さんは頑なな表情で僕を見つめた。
「……お前は大阪へ行け。俺の妾の家に世話を頼んである」
それはとても残酷な命令だった。
じわじわといたぶられて斬られるよりも、僕にとってはずっと残酷だ。
僕の身体がもう持たないことは僕自身よく分かっている。
だけど、新撰組として死ねないことが、とても悔しかった。