きみがため
堪えられない。
そんなの、堪えられるわけない。
みっともなくたって良いから、本当に求めるものを手に入れてみたい。
僕の生涯で、これが最初で最後の我が儘だ。
僕は布団から飛び出し、屯所の慌ただしさに紛れて抜け出した。
呼吸はとてもしづらいし、身体も重い。
だけど僕は足を前に踏み出し続けた。
急ごうとするほど、絡まる足に、苛立つ。
息が上がって痛みさえ覚える胸を掴むと、八重のかんざしに触れる。
それがまた僕に力をくれる。