きみがため
八重はもう河原には来なくなっているかもしれない。
勝手な僕に、もう笑いかけてはくれないかもしれない。
でも。
それでも。
町を抜け、目の前に広がるキラキラと眩しい河原。
たくさんの小さな草花が、チラチラと風に震える。
僕はその中に、一際美しい花を見つけた。
込み上げる、どうしようもない愛しさ。
それでいて胸は切なく絞まるのに。
沸き起こるのは、めちゃくちゃに抱きしめてしまいたいという、強い衝動。
「……八重っ!」