きみがため
僕が名を呼ぶと、八重は弾かれたようにこちらを振り返る。
「沖田様!」
残った力を振り絞って河原に下りる僕に向かって、八重も駆け寄って来る。
逸る気持ちに反して重い身体が、どうしようもなくもどかしい。
次第に二人の距離が縮まり、僕は八重にしがみつくようにしてその場にしゃがみ込んだ。
釣られて同じようにしゃがむ八重は、僕の身体をしっかりと支えてくれる。
「沖田様……」
戸惑いを含んだ八重の声。
僕はしがみつく両腕に力を込めた。
「僕は、欲張りな男です」