きみがため
「僕は、貴女の中で生きていたい。いつも貴女の心の中に居て、名を呼んで貰いたい……!」
みっともない男だと、八重は呆れるだろうか。
居場所を無くして、死を前にした男が、女にすがるなんて。
もし呆れなくたって、こんな僕の我が儘を押し付けて、困らせるだけだ。
でも、抑えきれない。
溢れ出す気持ちを、伝えたくて。
受け止めて貰いたくて。
優しい貴女に、僕はやさしい傷を残す。
「愛してる、八重……」
言葉にすると、沢山の感情が波のように押し寄せて。
処理しきれないで僕は、ボロボロと涙を零した。