きみがため
「ごめん。僕は貴女を傷付けることしかできない」
「そんなこと、ありません」
僕は八重に寄り掛かったまま、切なそうな彼女の顔を見上げた。
「……死にゆくだけの男の愛なんて、重荷以外の何物でもないでしょう」
八重の顔が益々悲しげな色を纏う。
「だけど、僕は我が儘だから。どんな形でも貴女の心に残りたくて……」
例えそれが、八重にとっての痛みや足枷であったとしても。
僕はなんて酷い男なんだろうね。
八重は支えてくれていた腕に力を込めて、僕をぎゅっと抱きしめた。
「我が儘などではありません、沖田様」