きみがため
八重は小さな、それでいてとても優しい声で言う。
「沖田様のお気持ち、とても嬉しいです」
冷えた風が僕らをさらりと撫でてゆく。
「私は……。私も、沖田様をお慕いしております」
その声は少し震えていた。
だけどしっかりと僕の心を揺らした。
想いの通じ合った喜びと、言いようのない切なさに僕は黙る。
八重は頬をほんのり赤らめて笑う。
「沖田様のお望みでなくても、私はきっと沖田様だけを想い続けます」
八重は柔らかな右手を僕の頬に添えた。
その掌の温かさに、僕の心はなだめられてゆく。
「私を、沖田様の最後の女にして下さいませ」