きみがため
娘もこちらに気づき、きちんとお辞儀をしてから、ふんわりと微笑んだ。
花のように笑う人だ。
僕が彼女に最初に抱いた印象はそれだった。
僕は少し躊躇いながらも、河原に下りてゆく。
「こんにちは」
僕はできるだけしっかりとした声で挨拶をする。
「こんにちは。いつも、見回りご苦労様です」
間近で見る娘は、やはり魅力的であった。
彼女を取り巻く空気が、優しくて暖かい。
僕が持ち合わせていないものだ。