恋愛ジャンキー *-甘い蜜に溺れて-*
目を伏せたままの沢村の瞳が、わずかに歪む。
差し込む西日が、教室をオレンジ色で包み込む。
「でも……、そんな弱い自分もイヤだったから、必死に別れた。
何度も手を伸ばしたくなったけど……、我慢した。
本宮先輩に、手助けしてもらいながら」
そこまで言った沢村が、ポスターを見つめた。
開けっ放しの窓から、野球部だとかサッカー部の音が聞こえてくる。
バットの金属音だとか、威勢のいい掛け声だとか。
そんな中、黙っていた沢村が言う。
「手を伸ばすのを止めてくれたのは、本宮先輩だったから。
本宮先輩が彩香さんに手を差し出したいなら。
あたしは、協力したい」
落ち着いてたけど、意志のこもった声だった。
周りの音なんかにはかき消されないような。